よくわかるマンション大規模修繕SUN

ISSUE 04 コンサル導入の手引き

マンガでわかる マンション大規模修繕 「CAPTAIN SUNLIGHT vol.04」

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コンサルタント会社の提供するサービスとその価値

コンサルタント会社が提供する一般的なサービス

コンサルタント会社は、マンションの劣化状況を調査し、その結果をもとに修繕すべき箇所の優先順位付けや、工事の手法と品質レベルの検討、概算費用の算定を行います。その後、施工会社を選定する際にアドバイスしたり、実際の工事が事前に計画した箇所・手法・品質できちんと進んでいるかのチェックもコンサルタント会社のサービスの一環です。
これら一連の作業には、建築・施工についての幅広い専門知識が必要で、通常、修繕委員会だけで対応するのは難しいところがあります。修繕委員会がまかないきれない専門的な知識やノウハウをカバーしてもらえるという点こそが、コンサルタント会社の本質的な価値といえるでしょう。
ただ、修繕委員会としては、専門的な事柄を多く含むコンサルタント会社の仕事の内容・状況を理解しながらともに大規模修繕を進めていく必要がありますし、それを「なぜこの工事が必要なのか、かかる費用は妥当なのか、やらないとどうなるのか?」といったレベルに噛み砕いて全組合員へ説明していくことが必要です。
したがって、建築や施工に関する専門的な事柄を素人にもわかりやすく説明できるかどうかも、コンサルタント会社を見極める重要な要素になります。

コンサルタント会社が提供するサービスのフロー

コンサルタント会社が提供するサービスは、大規模修繕の進行に沿って建物調査・診断、修繕計画の策定、施工会社選定の支援、工事監理というフローで進んでいきます。また、各段階で発生する管理会社や施工会社との調整や交渉についても随時支援を行います。

建物調査・診断の手配・実施・分析・報告
アンケートの例

大規模修繕工事の前には必ず建物の調査・診断を実施し、この結果をもとに修繕の範囲と工事内容を検討していきます。
調査・診断の内容は、居住者へのアンケートや建物の目視、測定器による試験などです。
アンケート項目の作成や、試験の項目設計、当日の試験やその人員手配、結果の分析、最終的な報告書のとりまとめはコンサルタント会社が担当しますが、居住者への事前周知とアンケートの配布・回収は修繕委員会側で対応する場合があります。
アンケートは、専用使用部分にあたるバルコニーの劣化状況を中心に、建物まわりの気になる汚れや傷みに関するものです。バルコニー部分についてはマンション全体としての傷み具合の傾向をつかむため、全戸数の1~2割くらいを目安に調査する必要があり、立ち入り調査を許可する人が1割を下回った場合、修繕委員会が許可してくれる人を探さなければならないこともあります。
こうした事前準備を経て当日の調査や試験が実施されます。
その後、調査・試験の結果を踏まえてどこがどのように傷んでいて、どう対処すべきかを分析した診断報告書をコンサルタント会社がとりまとめ、理事会および修繕委員会向け、居住者向けで計2回の説明会を実施します。居住者向けの説明会については、理事会と修繕委員会が主催者となりますので、周知・参加者管理・会場の手配・設営・当日説明対応は理事会と修繕委員会で協力して進めていくことになります。ただし、技術的な内容に関する当日の説明や居住者からの質問対応はコンサルタント会社も同席して支援してくれるのが通例です。

修繕計画の策定

コンサルタント会社は、建物調査・診断の結果から、修繕工事の対象箇所や各工事の内容・手法・品質、それらを実現するために必要と考えられる費用を「修繕計画書」としてまとめます。
修繕計画書の内容は、工事仕様書と予算書の2種類になります。工事仕様書は施工会社へ向けた、いわば「工事の教科書」です。塗装の重ね塗りの回数や防水工事の工法といった施工の方法や材料・品質の指定などが細かく記載されています。予算書は、その工事に大体いくらかかるのかがわかる書類です。どんな建築材料がどのくらい必要か、さらにそれぞれの金額、加えて施工費などが記されています。
工事仕様書・予算書は、居住者向けに工事の内容と費用を説明する際や、施工会社に見積りを依頼する際の基礎資料となります。
ただ、これらは施工会社向けに書かれた専門的な内容なので、居住者向けの説明には写真や図を主体としたわかりやすい資料を別途作成するのが通例です。居住者向け説明資料の作成や、実際に説明を行う際のサポートもコンサルタント会社のサービスの一環です。

  • 居住者向け説明資料(抜粋)

  • 予算書(抜粋)

  • 工事仕様書(抜粋)

施工会社選定の支援
施工会社の比較表の例
※施工会社の比較表については、本誌6号で詳しくご紹介いたします。

修繕計画の確定後は施工会社の選定を進めていきます。候補となる施工会社の公的実績データの提供や比較表作成、面談同席、面談用ヒアリングシート提供、施工会社からの見積り内容チェック、選定判断へのアドバイスなどが、この段階でコンサルタント会社が提供するサービスです。

工事監理

工事監理とは工事の進捗や品質をチェックすることです。着工後は、施工会社側でも「現場代理人」という役割の担当者が随時チェックしていきますが、それはあくまで施工の当事者によるもの。コンサルタント会社は建物の専門家としての目線で仕様や工程を客観的にチェックします。コンサルタント会社の現場確認は一般に週1回程度ですが、その頻度は契約の際に決めておきます。また、当初予定外の工事を追加で行う必要が生じたときの判断に対するアドバイスや、代替案の提示もコンサルタント会社の仕事です。
そのほか、月に1回程度の定例会にも参加し、修繕委員、現場代理人などと工事の進捗や居住者からのクレームの有無などを共有して、大規模修繕工事の円滑な進行をサポートします。

管理会社・施工会社との交渉支援

管理会社や施工会社と何らかの交渉をする必要が生じた際、修繕委員が不安を感じがちな建築や工事の専門知識、業界慣行などの点についても、コンサルタント会社へ相談すればアドバイスをもらえます。ただ、管理会社・施工会社と契約関係にあるのは理事会ですので、交渉するのはあくまで理事会・修繕委員会になります。コンサルタント会社の立場上、交渉の代行まではできないものと考えておきましょう。

コンサルタント会社への報酬

コンサルティングに対する報酬は、なにをするか、何回来て、なにを提出するか、など請け負う項目によって異なります。見積書にはこれらの項目に対する料金が記されているはずなので、相見積をする際はよく見比べましょう。
見積りの各項目の中で、総額に対する割合が大きくなりがちなのは工事監理に関する費用です。その理由は、現場へ足を運ぶ人件費がかかるからです。もし週に2回、3回と他社より頻度が高い場合は、その分費用も高くなります。他社と比べて費用が高い場合は、その理由を確認しておきましょう。
なお、見積書に細かい内訳が記載されておらず「○○一式」などと書かれている場合は要注意。コンサルタント会社は、大規模修繕に必要となる費用の妥当性や根拠の説明を支援する立場ですので、自社の費用の妥当性や根拠を提示できないのは論外です。

chaptert 2

〜 発掘編 ~コンサル導入マニュアル

どのようにしてコンサルタント会社を探すのか?

コンサルタント会社を探すには下記のような方法があります。最近はインターネットが主流ですが、一概にどの方法がベストというものではなく、その時の状況で試せる限りの複数の方法を組み合わせてよい会社を探していくことをおすすめします。

  1. 1インターネット

    「大規模修繕 コンサルタント」といった検索ワードで複数の会社が見つかるはずです。できる限り実績が豊富で、各業務に対する姿勢がわかりやすい会社がベターでしょう。Webサイトが素人にもわかりやすい内容になっているか、サイト上の説明がどれだけ丁寧かといった点も、その会社の仕事に対する姿勢を見極めるポイントになります。

  2. 2知人や関係者からの紹介

    マンションの大規模修繕に関するコンサルティングは、近年急速にニーズが高まった事業です。そのため会社の実力に開きがあるのは事実。自治会や町内会、近隣マンションの理事会などとの交流から、既に大規模修繕工事を完了させた他のマンションで実力が証明されているコンサルタント会社を紹介してもらえるようならば、積極的にコンタクトを取るべきです。また、過去にコンサルティングを依頼したことがある会社など、すでに実力がわかっている会社があるならば、そこにも声をかけてみるというのも一つの方法です。

  3. 3公的機関等からの紹介

    都道府県、市町村、もしくはそれら公的機関から委託を受けた団体も、マンション管理や大規模修繕を支援しています。自治体のWebサイトを確認し、そうした窓口が身近にあるようなら、コンサルタント会社へ直接コンタクトする前に一度相談してみるのもよいでしょう。

  4. 4専門紙を通じて公募

    コンサルタント会社や施工会社が購読している専門新聞や雑誌を通じて公募します。一般的には知られていない媒体ばかりなので、どれに掲載すればいいかは管理会社へ相談してみてもいいでしょう。

SUNシリーズ一覧

  • ISSUE 01 大規模修繕を知る
  • ISSUE 02 修繕委員のABC
  • ISSUE 03 パートナー選びの基礎知識
  • ISSUE 04 コンサル導入の手引き
  • ISSUE 05 修繕計画の予習帳
  • ISSUE 06 施工会社の選び方