よくわかるマンション大規模修繕SUN

ISSUE 01 大規模修繕を知る

マンガでわかる マンション大規模修繕 「CAPTAIN SUNLIGHT vol.01」

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大規模修繕とはなんでしょう?

大規模修繕とはなんでしょう?

マンションの専有部/共用部の区分けと、おもなメンテナンス箇所

マンションは普段お住まいのお部屋などの専有部分と外壁や屋上、廊下、エレベーターなどの居住者が全員で利用する共用部分にわかれます。大規模修繕は定期的に行う共用部分の点検やお手入れ、修理のことを指します。
専有部分はそれぞれの居住者がご自身でお手入れやリフォームといったメンテナンスをする部分。毎日接していたり見ていたりするので、汚れや傷み具合を把握しやすいはずです。
一方で共用部分は、普段あまり見ることのない屋上や高層階の外壁などが含まれるので、汚れや傷みといった劣化状況がわからないことがあります。しかし、日々日光や風雨にさらされている部分が多く、お住まいのお部屋以上に劣化が早く進みます。この部分は管理規約によって居住者が勝手にメンテナンスをするわけにはいきません。そのため大規模修繕は、管理組合の承認によって実施することになります。

日常のメンテナンスとの違いとは?

外壁の塗装やひび割れの補修など、普段見えない、手が届かない部分で作業を行うため、このような「足場」を設置します。
外壁の塗装やひび割れの補修など、普段見えない、手が届かない部分で作業を行うため、このような「足場」を設置します。

ほとんどのマンションでは外壁のひびやタイルの剥がれ、廊下や駐車場照明の電球切れなどがあればその都度交換しているでしょう。このような日常のメンテナンスは、建物の長寿命化にとって非常に重要です。たとえば窓に設置する面格子などのアルミは、お手入れをしなくても大丈夫と思われがちですが、大体30年前後で白いさびが目立つようになり交換する必要があります。ところが、週に1度磨くことを続けた結果、30年後もピカピカの状態で、交換の予定さえないというケースもあるのです。
とはいえ普段見えない、または手が届かない外壁の高い部分などは、日常のメンテナンスでは対応できません。このような部分を一括して全面的に行う補修を大規模修繕といいます。一般的に大規模修繕は、外壁周りに足場を組んで行うことになります。

メンテナンスをしなければどうなりますか?

マンションに使用されている外壁のタイルや塗料、防水層などは、メンテナンスを続けなければ劣化していき、いずれは機能を果たさなくなってしまいます。そのなかでも特に劣化が目立ってしまう部分は次の4つ(下記写真)です。

  • 1.屋上
    屋上を覆う建築材料にはアスファルトなどさまざまなものがありますが、どれも太陽光や寒暖の影響で日々伸び縮みしています。その結果、防水性が弱まり雨漏りの原因に。また、新築時の施工品質によって寿命が左右されやすい部分でもあります。その品質によっては大規模修繕の時期が数年早まることも。
  • 2.外壁
    外壁のおもな仕上げにはタイルと塗装の2種類があります。どちらも普段からほこりや砂で汚れるだけでなく、地震や車の振動などの影響を受けているので、ひびや剥がれの可能性があります。ひびは幅0.3㎜から水が入るといわれています。浸水が進むことで鉄筋コンクリートの鉄筋がさびると、耐久性に重大な影響を与えてしまいます。大規模修繕の最大の目的は、この耐久性の維持といえます。
  • 3.廊下、階段、バルコニーの床
    こちらもメンテナンスを怠れば屋上と同様に雨漏りや水たまりの原因に。普段人が通る部分なので、水がたまってしまうと日常生活への影響だけでなく、転倒の危険もあります。ちなみに廊下、階段、バルコニーなどの床は人が歩くので、屋上よりも防音性や耐久性を重視しています。そのため、屋上などに比べて高額な建築材料を使用していることがほとんどです。
  • 4.鉄部の塗装(外階段、玄関枠、メーターボックスなど)
    鉄はさびると、その部分が風化して徐々に痩せていき、やがては無くなってしまいます。そこでさびる前に塗装をすることになります。定期的な塗装をすれば、鉄部を守り続けることができるのです。

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なぜ定期的
大規模修繕が必要なのか?

なぜ定期的な大規模修繕が必要なのでしょう?

大規模修繕を実施回数

実は「何年に1度必ず行うように」といった法律はありません。ただし平均して築10年前後でさまざまな部分の劣化が目立ってくることから、この時期に大規模修繕を実施しているケースが多くなっています。そのようなことから国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」のモデルケースでは12年周期としています。

国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」のモデルケース

安全性、居住性の維持のため

劣化で起こりうる弊害
劣化で起こりうる弊害

建物の劣化によって安全性、居住性が損なわれる可能性があります。たとえばタイルが剥がれて落下すると通行人に当たるかもしれないので大変危険です。また非常にまれなケースですが、高圧受電設備(キュービクル)のメンテナンスを怠ったため、マンションだけでなく、周辺地域までも停電になってしまった事例もあります。

ただし、居住する階などによってその被害状況は異なります。屋上の雨漏りは、しばらくは最上階に住む人にしか影響がない可能性が高いですし、エレベーターの故障は、1階の居住者には関係ないかもしれません。しかし、だからといって無関心ではマンションの安全性、居住性を維持できないのも事実。管理組合全員で建物を守る、という気持ちが大事です。

資産価値を守る

大規模修繕の実施状況でマンションの売却価格は大きく変わります。中古物件を購入した直後に大規模修繕が予定されており、修繕積立金の増額や一時金の追加徴収がおこると、買主のライフプランは変更を余儀なくされます。そのような観点から、大規模修繕がいつどのように行われてきたか、今後の予定はどうなっているのかをあらかじめ確認するのが主流となりつつあります。
また、長期固定金利の住宅ローン、フラット35の審査基準には、長期修繕計画書の有無や修繕積立金の金額に基準があります。つまり大規模修繕が無理なく実施できる物件でないとローンが組めないようになっているのです。
実際に修繕工事の前後では、工事後の方が売却価格が高くなるケースがほとんどで、この時期を狙って売却する人も珍しくありません。

居住者の年齢構成や時代の変化に合わせた構造、設備の最適化

マンションのバリアフリー化例
「マンションのバリアフリー化」

築年数が20年、30年となれば居住者も高齢化するので、階段へのスロープ設置や手すりの追加といったバリアフリー化など、必要に応じて住みやすくするための対策を考える必要があります。
また時代の変化とともに、より安全、便利に暮らせる設備も開発されています。たとえば玄関のドア枠を耐震仕様に交換したり、インターネットを快適に利用するために光ファイバーを導入するといった最適化が考えられます。

  • 光配線でインターネットを高速化
    光配線でインターネットを高速化
    電話局から建物までは光ファイバーを導入し、建物内の通信には、既存の電話回線で高速通信ができ導入が簡単なVDSLを利用するケースが多い。各戸への配線はメーターボックスや給排水管を利用する。
  • 耐震ドアの設置
    耐震ドアの設置
    建物は耐震化していても、地震の際に各戸の玄関が変形して避難できなければ大問題。玄関のドア枠を耐震仕様に交換したり、扉の中にさらに小さな扉がある製品に交換するなどの方法がある。

SUNシリーズ一覧

  • ISSUE 01 大規模修繕を知る
  • ISSUE 02 修繕委員のABC
  • ISSUE 03 パートナー選びの基礎知識
  • ISSUE 04 コンサル導入の手引き
  • ISSUE 05 修繕計画の予習帳
  • ISSUE 06 施工会社の選び方