よくわかるマンション大規模修繕SUN

ISSUE 04 コンサル導入の手引き

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〜 内部手続き編 ~ コンサル導入マニュアル

マンションの共用部分に関わる変更や、管理組合業務の委託、費用の拠出、組合員共同の利益に関わる重要事項の決定などには、区分所有法の定めにより総会決議での承認が必要です。大規模修繕の実施や、コンサルタント会社導入も、決議による承認が必要な事項になります。したがって、選定したコンサルタント会社の導入を管理組合として確定させ、契約を締結して実際に大規模修繕のパートナーとして動き始めてもらうには、総会で承認を得なければなりません。
大規模修繕、コンサルタント会社の導入とも、基本的に必要なものなので、その必要性に対して反対する人は一般に少数だと考えられます。ただ、目的や意義、選定のプロセスや根拠の説明が不十分なまま決議を行うと、「必要性」ではなく「進め方」に不安や不満を抱く人が発生し、思わぬ結果になることがあります。 そうならないためにも、丁寧な広報活動でマンション内の合意を形成していきましょう。進め方としては次の通りです。

大規模修繕の検討を開始する旨の周知

時期がやや遡りますが、修繕委員会を結成した直後、メンバー紹介や今後の活動予定とあわせて、大規模修繕の目的・内容・意義を広報しておきましょう。マンションの将来にとって大規模修繕がいかに重要な取り組みであるか、どのような内容で、どういう種類の知識やノウハウが必要となるのか。あわせて「外部の専門家に支援してもらうことを検討している」と周知することができれば、コンサルタント会社導入の布石となります。なお、広報の手段としては掲示板への掲示だけでなく、資料の戸別配布をおすすめします。

居住者説明会の実施

理事会主催の居住者説明会を開催し、大規模修繕の目的・内容・意義と、大規模修繕においてコンサルタント会社が必要な理由、期待する成果(専門性や客観性、将来へのアドバイスなど)、予算感や選定基準を説明します。
修繕委員会は理事会の諮問機関ですので、主催者として前面にでるのは理事会になりますが、修繕委員も裏方として準備から当日運営までの全作業に関わります。
この説明会は、コンサルタント会社の選定前・選定中でも開催可能ですが、選定後の方が見積書や各社の比較表を用いてより具体的な説明ができます。この段階で「こういう理由でこの会社へ依頼しようと考えている」というところまで説明して質疑を尽くせれば、その後の総会承認のハードルがぐっと下がるため、できるだけ候補を1社に絞り込んで居住者説明会を開催しましょう。
居住者説明会を準備・運営する際の流れとポイントは次の通りです。

  1. 1スケジュール設定

    居住者説明会は、なるべく多くの居住者が参加できる形で運営するのが効果的です。そのため、曜日や時間帯を変えて複数回開催するのもよい方法です。

  2. 2会場の確保

    ふだん総会を開催している会場が使えるなら、そこで開催するのが無難です。その他の候補としては、公民館やマンションの管理組合室など。

  3. 3説明会開催の周知

    開催の周知は、1ヶ月前と2週間前の2回に分けて行うのがベスト。1回目は参加の意義などを含めてより詳細な内容を周知し、2回目は最終確認として広報します。開催の案内は必ず理事会名義で、各戸へ配布します。掲示では読んでもらえない可能性が高いためです。

  4. 4事前準備

    説明会の前には、説明資料や質疑応答時の想定問答集を作成するだけでなく、シミュレーションとリハーサルを行うとよいです。本番で動揺してしまうと聞く方は不安になってしまいます。そうなると本筋から外れた質問が出てきがちなので、最低でも1回は質疑応答も含めたリハーサルを行っておくことをおすすめします。

  5. 5説明会当日

    主催者は理事会となっていますので、司会進行・資料説明・質疑応答とも原則として理事が行う形が一般的です。ただし、細かな部分に関する説明や質疑応答のサポートは修繕委員会の役割と考えておきましょう。

配布資料の数字に注意!

説明会当日の配布資料では、見積額やコンサルタント会社の評価点などの確定前の数字は記載しないようにしましょう。確定前に配布すると、数字が独り歩きして思わぬ誤解やトラブルを招くことがあります。

総会決議(居住者説明会後)

居住者説明会によって、大規模修繕実施とコンサルタント会社導入の合意が得られる状況を形成してから、総会の決議に臨みます。説明会での内容をベースに、総会の席で候補会社、選定プロセス、各社に対する評価(詳細見積額も含む)、修繕委員会として推薦する候補とその理由、必要予算額を提示し、大規模修繕実施およびコンサルタント会社導入・選定した会社の承認を得ることになります。居住者説明会で丁寧な説明を行っていれば、この段階でトラブルが生じることはあまりありませんし、そうなるように進めていく心掛けが大事です。


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〜 契約締結編 ~ コンサル導入マニュアル

総会で承認を得たら、コンサルタント会社と管理組合の間で業務委託契約を締結します。この契約は業務委託契約書に双方が署名押印する形式で締結されるのが一般的です。マンション側は理事長が署名し、理事長印を押印します。 契約書はほとんどの場合コンサルタント会社が作成します。業務範囲や請負金額が明記され、守秘義務や契約解除条件などが記された約款も添付される形です。書式のサンプルとチェックポイントを図に示します。本号Web付録として、チェックポイントにコメントを入れた同書式のデータも配布しておりますので、ぜひあわせてご参照ください。


CHECK POINT!

コンサルタント会社により体裁はさまざまですが、必ず明記されている必要があるのは、マンションの基礎情報、委託する業務の内容、業務の期間・報酬額・支払方法、契約書に定めのない事項の扱いです。この点に漏れがないか、事前の合意と相違がないかをよく確認しましょう。

SUNシリーズ一覧

  • ISSUE 01 大規模修繕を知る
  • ISSUE 02 修繕委員のABC
  • ISSUE 03 パートナー選びの基礎知識
  • ISSUE 04 コンサル導入の手引き
  • ISSUE 05 修繕計画の予習帳
  • ISSUE 06 施工会社の選び方