よくわかるマンション大規模修繕SUN

ISSUE 04 コンサル導入の手引き

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〜 提案依頼編 ~ コンサル導入マニュアル

候補先の絞り込みから初回面談までの実務

候補を一通りピックアップしたあとは、その中から実際にコンタクトする会社を絞り込み、各社との初回面談を設定・実施します。各段階でのポイントは次の通りです。

候補先の絞り込み

コンサルタント会社を選択する際は、できる限り数多く接触した方が、よい会社と出会えるチャンスが広がります。しかし、調整や面談の手間を考えると、実際にコンタクトを取るのは3~5社程度になるのが一般的です。
この段階での絞り込みの目安となるのは、各社のホームページから読み取れる実績の豊富さ・説明の丁寧さ・会社としての姿勢に共感できるかといった点や、紹介元から聞いた過去の仕事の評価となりますが、やはり実際に会ってみないと判断し難いところがあります。あまり精密に絞り込もうとせず、ざっとの比較で上位3~5社程度を選んで次の段階へ進みましょう。

連絡

選んだ各社へ連絡していきます。大規模修繕のコンサルティングを相談したい旨・希望時期・マンション名・所在地・連絡者の立場といった基本的な情報の他、次のような点についてもこの時に伝えられると、その後がスムーズになります。なお、連絡の手段としてはメールが一般的です。

  1. 1面談希望日時

    都合のよい日時をあらかじめ委員会内で調整の上、できれば2~3つ程度の日程候補を伝えます。複数のコンサルタント会社との面談を同じ日の別な時間帯で設定していく場合は、1社当りの面談時間を1時間から1時間半、次の会社の時間枠までに1時間程度は間隔をあけておきましょう。

  2. 2面談時に用意できる資料

    初回面談で提示したい資料は、竣工図書・修繕履歴の記録・長期修繕計画書の3点です。これらが用意できない場合、マンション販売時のパンフレットがあれば建物の構造やエレベーターの数など最低限の情報を伝えることができます。

  3. 初回面談

    初回面談の際、コンサルタント会社側からは通常1~3名程度が参加しますので、この人数プラス修繕委員会側の参加者数が打ち合わせできるスペースを用意しておきましょう。打ち合わせのおもな内容は次の通りです。

    1. 1顔合わせ

      あいさつ、名刺交換。

    2. 2先方会社説明

      会社の業務範囲やコンサルティングの特色、強み、姿勢やポリシーを説明してもらいます。会社案内や実績紹介資料は後日の情報共有のために保管しておきましょう。

    3. 3依頼内容説明・資料開示

      竣工図書・修繕履歴の記録・長期修繕計画書を提示しつつ、希望時期、現在の取り組み状況、期待する支援内容を伝えます。劣化が気になっていたり、追加・更新を検討している設備があれば、あわせて話しておきましょう。
      この際、コンサルタント会社から修繕積立金の状況を聞かれるかも知れませんが、まだ開示するべきではありません。積立金の状況に合わせるのではなく、まずはマンションを客観的に見て最善の修繕プランを提出してもらうのがおすすめです。

    4. 4建物案内

      マンション全体を案内します。エントランスやエレベーターのような利用頻度が高い場所はもちろん、非常階段、屋上や地下といった普段は立ち入らない部分、駐輪場や機械式駐車場、どこか1室の居室とバルコニー、劣化が気になっている箇所を一通り見てもらう形です。案内ルートの検討や鍵の確保は事前に済ませておくとよいでしょう。

    5. 5見積り依頼

      ここまでの感触がよければ、最後に見積りを依頼します。何かしら違和感があった場合は、依頼はせずに面談を終了し、委員会内で対応を話し合うべきです。その際の判断基準としては以下のようなものがあります。

      • 誠実さ、対応の真摯さ

        劣化箇所の写真を撮ったり、こちらの話を丁寧に聞いて理解しようとしているかといった、基本的な対応に違和感がないかに注意しましょう。また、事前に下見や調査を行っている形跡があったかなどもチェックポイントとなります。

      • 経験

        マンションの大規模修繕は特殊な工事で、新築工事とは勝手が違います。マンションの大規模修繕における30件以上または5年以上の経験があると安心です。加えて、実績の中に構造・立地・抱えている課題などの面で自分のマンションと似たものがあればなおいいです。非常に高いハードルですが、できるだけこれらの条件に合致する会社に依頼したいところです。

      • 説明のわかりやすさ

        大規模修繕は「工事」なので、打ち合わせ時はどうしても建築や工事の専門用語が出てきますが、修繕委員がそれらのすべてを勉強し、理解していくのは困難です。専門的な用語や概念を平易な言葉でわかりやすく説明できるのも優秀なコンサルタントの条件といえます。

    見積りを依頼しない会社に後日メールで断りの連絡をする

    委員会内で話し合った結果、見積り依頼を見送ることになった場合は、断りの連絡をするのがマナーです。連絡の手段としてはメールが一般的です。

    コンサルタント会社への提案依頼の流れ

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    〜 比較・選定編 ~ コンサル導入マニュアル

    初回面談を経て、各社に見積りを依頼したあとは、提出された見積り内容や提案を比較して、依頼先を選定していく段階に移ります。なお、この段階での修繕委員会による「選定」は、あくまで諮問機関としての参考意見の取りまとめであって、最終決定ではないという点に注意が必要です。
    比較・選定の進め方は次の通りです。

    見積りの受領

    通常、依頼後2週間程度で見積書が発行されます。発行があまり遅いようなら、「この会社は対応スピードが遅い」という事実は比較・選定の際の参考情報として残しつつ、メールや電話で状況を確認してみましょう。
    また、見積りを持参して説明したいという会社もあるかもしれませんが、まずは各社の見積りを集めて委員会内で比較し、各社への確認事項を明確にしてから説明を聞くのがおすすめです。

    見積り内容の確認・比較

    各社の見積り内容を確認・比較し、不明点や掘下げて確認すべき点をまとめます。例えば、意味がわからない項目や、「○○一式」といったあいまいな記述になってる項目はその詳細を確認する必要があります。また、A社とB社の見積りを見比べたとき、A社の見積りにはない項目がB社にある場合、同じ項目なのにA社とB社で大幅に値段が違う場合などは、A社とB社の双方にその理由を確認した方がよいでしょう。特に「工事監理」の項目では、想定している現場確認の頻度によって各社で価格差が出がちです。

    2回目の面談

    日程調整の上で各社に再度来訪してもらい、見積りと提案の内容を説明してもらいます。この時は修繕委員だけでなく、情報共有のために理事会からも何人か出席してもらいましょう。所要時間は40分程度です。面談の内容と時間配分は以下のようなイメージです。

    • 1見積り金額の説明・20分

      コンサルタント会社から見積りの内容を説明してもらいます。細かな点の確認や質疑応答は後として、ここでは説明の丁寧さや、素人でもわかる言葉で話してくれているかといった点をチェックしておきましょう。

    • 2提案内容の説明・10分

      これからコンサルティングを進めていくにあたっての方針や、対応してくれる範囲、進行イメージを大まかに説明してもらいます。この際、他社との差別点もあわせてアピールしてもらいましょう。居住者向けの説明資料や、修繕計画書のサンプルなども見せてもらえればベターです。説明の丁寧さ・わかりやすさは引き続きチェックします。

    • 3質疑応答・10分

      事前にまとめておいた見積りに対する確認事項のうち、ここまでの説明で解消されなかった点や、この面談の中での不明点があれば、遠慮せずに何でも聞いてみましょう。質問に根気強く対応してくれるかも、大事なチェックポイントのひとつです。

    比較・選定

    見積りと提案の内容、面談の際やその周辺のやりとりの印象を総合して、依頼先を決定します。この時、見積りの金額はもちろん重要な要素になるのですが、一方で相対的なものでもあります。例えば、幅広いサポートと手厚い対応を前提とした見積りであれば、先方も時間をかける分だけ金額が上がってしまうのは仕方がありません。
    大切なのは金額ではなく、金額に見合った働きをしてくれそうか、大規模修繕に取り組む2~3年間を通じてつねにきちんと対応してくれそうか、マンションの未来を左右する大きな仕事を信頼して任せてみようという気持ちになれるかです。そういう意味においては、委員会の主要メンバーがコンサルタントに好感を持てるかという人的な相性も大切なポイントと言えます。
    もし時間に余裕があれば、先方のオフィスを下見して社風を確認したり、過去に担当したマンションの管理組合を紹介してもらい満足度を聞いてみるという方法で、判断のための情報を増やすこともできます。

    選考結果の連絡

    見積りを提示してもらった各社に対して、当選・落選に関わらず結果を連絡していきます。当選した会社に対しては、御礼を交えて当選の旨を伝える文面とともに、理事長印が押印された内示書を郵送します。当選・落選の文面例、内示書をWeb付録として用意しておりますので、よろしければご活用ください。


SUNシリーズ一覧

  • ISSUE 01 大規模修繕を知る
  • ISSUE 02 修繕委員のABC
  • ISSUE 03 パートナー選びの基礎知識
  • ISSUE 04 コンサル導入の手引き
  • ISSUE 05 修繕計画の予習帳
  • ISSUE 06 施工会社の選び方