ISSUE 06 施工会社の選び方
そもそも、ダイキボシュウゼンってなに?
理事・修繕委員の方必見!
大規模修繕の必要性やおおまかな流れがこの1冊に。
施工会社の提供する業務とその価値
施工会社が提供する一般的な業務
施工会社は、工事仕様書と現場調査の結果をもとに、工事の細かな方法や手順、必要な建築材料と作業の量、人員を検討し、工事計画と見積書を提示します。そして、着工後に合意したスケジュールと予算のなかで工事仕様書通りの品質を実現すべく現場を管理していきます。工事中の安全管理や、苦情等への初期対応、竣工後のアフターフォローも施工会社の役割です。
施工会社というと単に「工事をする会社」と考えがちですが、住みながらの工事を進めるために必要な周辺の諸調整も一手に担っており、居住者と接する機会も多くあります。施工に関する専門的な知識・技能のみならず、工事全体を円滑に進行する調整力とサービスマインドこそが、施工会社の本質的な価値であり、選定上のポイントでもあります。
施工会社が提供するサービスのフロー

施工会社は、一般に次のような流れでサービスを提供します。
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1工事計画の立案
理事会から依頼を受け、工事仕様書に沿って工事計画と見積りを作成・提示します。これらの作業は、通常、工事仕様書だけでなく、マンションの実際の状況を事前確認した上で行われます。
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2工事計画の説明
提示した工事計画の内容をまずは理事会・修繕委員会、後に工事説明会として居住者に説明します。理事会・修繕委員会向けの説明は施工会社選定中に、工事説明会は選定後~工事請負契約締結の間で行うのが一般的です。
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3建築材料と人員の手配
必要な建築材料と適材適所の人員を手配します。昨今は2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどの影響で人員不足が深刻化しており、いかに優れた人員を集められるかも施工会社の腕の見せ所です。
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4工事前調査・アンケート
コンサルタント会社による調査から時間が経過しているため、現時点での最新状況、バルコニー周りの細かな情報取得を目的として、再度の調査・アンケートを行います。
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5施工
工事を開始したら、その進行と品質に責任を負います。同時にきちんと予算内に収めることや工事中の安全管理も施工会社の重要な仕事です。さらに理事会や修繕委員会に対する定期報告会では、進行状況と今後の予定、懸念事項などを報告します。追加工事が発生すれば臨時報告会の開催を理事会に申請することになります。また、実際に足場を組んで全体を調査してみると、地震による建物のゆがみなどがわかることもあります。たとえ今回の修繕項目ではなくても、そのような不具合を発見し、積極的に対策を提案してくれる会社が優れた施工会社といえるでしょう。
なお、各工事の進捗や、工事による騒音・作業員の立ち入りといった生活への影響の周知や、「明日はベランダに洗濯物を干していいのか」「強風で足場を囲むシートがうるさい」といった居住者からの疑問や苦情の受付と対応も施工会社の役割です。 -
6アフターフォロー
工事後の定期点検などのアフターフォローも施工会社の仕事になります。契約にもよりますが、修繕箇所の保証期間は一般に10年前後。施工会社との本当の付き合いは、竣工後からといえるかもしれません。
修繕費用の目安

※一部対応していない機種がございます。あらかじめご了承ください。
大規模修繕の費用は、建物の規模や傷み具合、修繕の範囲や使用する建築材料のグレードによって大きく異なります。一般的な初回の大規模修繕の目安は、1戸あたり100万円程度です。
施工会社による見積り前段階でより詳細な費用感を知りたい場合は、右下欄のスマートフォン用アプリをご利用ください。
これはやってくれるの?
大規模修繕工事において施工会社が業務を行う範囲は、基本的に建物の構造躯体や廊下などの共用部分です。ところが実際に工事がはじまると「これはやってくれるの?」といった疑問が出てきます。よくあがるのは次のようなものです。
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■バルコニーの片づけ
バルコニーでは塗装や防水工事を行います。ですが、そこに置かれた植木鉢などは個人の所有物。施工会社は勝手に動かせません。居住者が片づけるのが原則です。
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■BSアンテナの取り外し
ベランダに取り付けたBSアンテナは、足場を囲むシートに当たる可能性があり、工事中は電波障害も起こりやすくなります。こちらも、居住者が取り外す必要があります。
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これらの作業は、施工会社や現場代理人によっては、状況により対応してくれることもありますが、物損等が生じると責任問題にもなりますので、基本的には「個人の所有物を扱う作業はダメ」と認識しておきましょう。
施工会社選定マニュアル 〜 発掘編 ~
コンサルタント会社を発掘した際との差異

コンサルタント会社を探した際と大きく異なるのは、「コンサルタント会社という、施工まわりの専門知識を持ち、業界事情にも明るいアドバイザーがいる」という点です。施工会社選定の支援まで含めてコンサルタント会社と契約している場合は、施工会社の探し方や、公募等の手続き、施工会社との細やかなやりとり、選び方、契約内容まで含めて支援・助言をしてくれます。
修繕委員会としては、コンサルタント会社のアドバイスを大いに参考にしつつ、候補探し・選定とも公平かつ公正な手続きを維持できるよう注意して取り組みを進めていきましょう。
どのようにして施工会社を探すのか?
施工会社を発掘する際のおもな経路は公募・インターネット・旧知の会社を当たるの3つで、公募を主体に他の2経路も必要に応じておりまぜる形が一般的です。それぞれの特長と留意点を以下でご説明します。
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1公募
公募掲時の記事内容イメージ 大規模修繕における「公募」とは、業界紙や専門紙に施工業者募集の告知を掲載することを指します。
現在、ほとんどのケースで利用されているのがこの手段で、その理由は高い公平性です。施工会社選定に際して、その候補が理事や修繕委員の推薦による会社で占められていた場合、「何か裏があるのではないか」といった根拠のない噂が立つこともあります。その点、公募を見た会社であれば自由に応募でき、応じて来た会社は候補にあげる公募という形式は、オープンで公平性が担保された手法といえるでしょう。
掲載の対象となる媒体は、「建通新聞」と「マンション管理新聞」が一般的です。両紙とも掲載料は無料ですが、前者の発行日は月曜日から金曜日のほぼ日刊(東京版の場合)なので、比較的掲載日の融通が利きます。対して後者は月3回の発行で、掲載希望日の枠が埋まっている可能性が前者よりも高くなります。地域により事情が異なることもありますので、どの媒体に出すかはコンサルタント会社と相談しながら決めていきましょう。掲載時の原稿作成や出稿手続きなども、基本的にはコンサルタント会社が代行してくれます。
なお、1度に複数の媒体で公募を行うのは、管理が煩雑になるためおすすめできません。通常は1つの媒体で十分な応募数を得られますし、よほどスケジュールがひっ迫しているのでなければ、応募数が足りなかった時に追加での公募を検討すれば十分です。もうひとつの公募
掲載してから応募を待つまでの時間がどうしてもないといったケースでは、館内公募という手段もあります。これは組合員から施工会社の推薦を募る方法です。
しかし、この方法は公募本来のよさである「オープンで公平」という面がやや減じるところがあり、場合によっては推薦した組合員と施工会社の関係性が疑われてしまうこともあります。館内公募を行う際は、より公平性に注意が必要です。 -
2インターネット
最近はインターネットで「大規模修繕 施工会社」といったワードで検索すれば、複数の施工会社が見つかるようになりました。施工会社探しの目的は、できるだけ多くの選択肢の中から最良の会社を選定することで、インターネットはその手段として有効といえます。印象のよい会社があれば、サイト上の実績を確認し、コンサルタント会社に業界内での評判を聞いた上で声をかけてみましょう。
ただし、経路をインターネットのみに絞ったり、特定の会社が運営する一括見積りサービスをおもな経路とするのはおすすめできません。一概にはいえませんが、登録している施工会社は、一括見積りサービスを運営する会社に広告料や情報量を支払っているケースが多く、その費用のぶんだけ見積りに上乗せされる可能性が考えられるからです。 -
3旧知の施工会社
新築時のゼネコンや、大規模修繕が2回目以降なら前回の施工会社に提案を依頼してみる手もあります。マンションの構造や事情を把握しているという点は大きなアドバンテージであり、安心感につながります。
また、近隣に大規模修繕を行ったマンションがあるようなら、自治会の集会などを通じてそのマンションの理事に接触し、評判がよければ紹介してもらうのも一案です。
前者、後者のいずれにせよ、最初からその施工会社のみに絞ってしまうのではなく、複数候補のうちの1社として選定に参加してもらうようにしましょう。過去によかった会社がいまもよいとは限りませんし、他のマンションで評判のよかった会社が自分たちのマンションに合うとも限りません。