事業案内

ISSUE 06 施工会社の選び方

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施工会社選定マニュアル〜 提案依頼・選定編 ~

施工会社から応募が集まった後の流れ

施工会社の比較表例

  • ①会社の基本情報
  • ②直近3年間の工事実績関数・売上高
  • ③国交省「経営規模等評価」による、経営状況の評点(0〜1595点)
  • ④同、自己資本額の評点(454〜2280点)
  • ⑤同、③④に技術力 / 社会性も加えた総合評価点(281〜2134点)
  • ⑥ISO(国際標準化機構)による品質管理分野の認定保持状況
  • ⑦同、環境管理(環境負担の低減等)分野の認定保持状況
  • ⑧依頼した大規模修繕工事への見積り額(進行状況によって未記入)
  • ⑨コンサルタント会社による一言コメント

各経路から応募が集まり次第、その中から有望な会社を数社選んで見積りを依頼していきます。その後、現場の事前確認や工事仕様に関する質疑応答を経て見積書と工事計画が提示され、それらの内容と面談の評価によって最終的に1社を選定する形です。
施工会社との細かな調整や各社の調査、選定に使用する比較表の作成などは、基本的にコンサルタント会社が対応してくれますので、各社の提案内容の理解と見極めに集中して進めていきましょう。


  1. 1見積り依頼先の絞り込み

    各経路から集まった応募を一旦整理し、見積りを依頼して具体的なやりとりを進める施工会社を3~5社程度選びます。経路として最も利用されている公募の場合、多い時で20件を超える応募があつまりますが、すべての会社を選定対象としてしまうと、対応や提案内容の精査、また後日の面談に膨大な手間と時間がかかってしまいます。したがって、この段階ではコンサルタント会社側がまとめた比較表など(右下図参照)を使って、アドバイスを受けながら有望な会社のみをピックアップしていくのが一般的です。
    比較表の細かな構成はコンサルタント会社によって異なりますが、各社の基本情報、過去数年間の施工実績・売上高、国交省による「経営規模等評価」の評点、ISO9001/14001の取得状況は外せない項目といえます。ここから読み取れる情報は、会社としての素性・実績・経営の安定性・コンプライアンスや業界標準の遵守度の4点で、逆に言えばこれら4点が一定水準以上でクリアされていれば、後は会社と言うよりも、施工会社側の担当者の個人的な姿勢や技量、修繕委員会との相性の問題と言ってもよいかも知れません。
    なお、各項目をすべて点数化するケースがありますが、これは一見客観的に見えるものの、実は点数化の尺度に主観が入らざるを得ないところがあり、客観的に見えて必ずしも客観的ではないということを覚えておくとよいでしょう。
    また、安心感からつい大手を中心に選ぼうとしてしまいがちになりますが、大手は見積りが割高になる傾向があるなどメリットばかりではありません。大手ばかりで揃えると、最終的に1社を選定する際にも比較上の差異が見えづらいところもあります。各比較項目の一定ラインをクリアしていることを前提に大手・中堅・新興とバランスよく選定することをおすすめします。

  2. 2現場説明会

    見積り依頼する会社が決まったら、実際に現場を見せながら工事の仕様や留意点を説明する現場説明会を開催します。
    現場説明会は、談合防止などの理由から基本的に複数回に分けて行うのが通例です。説明会の日程調整や施工会社への連絡など、この段階での窓口対応は、基本的にコンサルタント会社が代行してくれます。なお、説明会当日は複数の業者が敷地内に立ち入ることになりますので、日程が決定した際は、必ず居住者の皆さんへその旨を周知しましょう。
    当日はコンサルタント会社から施工会社に対して、工事仕様書など詳細な資料の配布とその説明、現場各所の案内が行われます。施工会社への対応、案内、説明ともコンサルタント会社が担当しますが、可能であれば修繕委員も立ち会っておきましょう。まれなケースですが、現場説明会を資料の配布と自由見学だけで終了させようとするコンサルタント会社もおり、その場合は施工会社側の現場の状況把握が不十分になって、不正確な見積りが提示されてしまう可能性があります。見学も兼ねて、ぜひ一度は立ち会ってみて下さい。

  3. 3見積書受領・面談依頼先の絞り込み

    現場説明会から見積書の提示まで、通常3~5週間程度を要します。この間、各施工会社とコンサルタント会社の間で工事仕様の詳細などについての質疑応答がなされていますが、修繕委員会が関わることは通常ありません。
    見積書が提示され次第、内容が工事仕様書に沿っているか、項目・数量・価格は適正か、その他の懸念点はあるかといった点をコンサルタント会社側でチェックし、先般の比較表に金額とコメントを追記します。その後、完成した比較表をもとに、修繕委員会で次のステップである面談に進める会社を絞り込んでいく形です。
    とは言え、見積り依頼の段階で既に3~5社程度に絞っていますので、ここでの絞り込みは「あまりに価格が合わない」「内容が不審」といった足切りが主目的です。コンサルタント会社からアドバイスを得つつ、着実に進めていきましょう。

    見積書は誰に届く?

    施工会社から見積りを依頼する際は、基本的に理事会が原本を受領し、その副本もしくは写しがコンサルタント会社に渡るよう手配します。この段階での施工会社とのやりとりはコンサルタント会社が担っているため、やや迂遠ではありますが、万一の不正を防止するため、このような形をとるのが慣行になっています。

  4. 4面談・最終選定

    ここまでの絞り込みを経て残った施工会社と順次面談し、1社を選定していきます。マンション側の参会者は、修繕委員・コンサルタント会社に加えて、できれば管理組合理事も入るとその後の内部手続きが円滑に進めやすくなります。面談のスケジュール調整や当日の進行はコンサルタント会社が担当し、一般的な面談内容・時間配分は次の通りです。

    01 会社紹介、工事内容の説明およびアピール(30分)

    施工会社から会社概要・特長・実績などの紹介、見積書・工事計画の内容説明を受けます。この際、工程表・仮設計画図といった書類を提示されることもあります。また、工事仕様書には指定がない独自提案がある場合は、このタイミングで詳細を聞くことになります。

    02 質疑応答(30~60分)

    ここまでの説明内容や、その他の一般的な確認事項について、修繕委員会が主体となって質問します。各社に対してまったく異なる切り口で質問をしていくと選定時の比較が難しくなるため、基本的な質問事項はコンサルタント会社主導で事前に整理し、共通質問リストとしてまとめておきます。
    施工会社側からは、実際の工事で現場を取り仕切る「現場代理人」が参加してくるのが通例です。これまでの絞り込みを通して、実績や体制の面では不足のない施工会社のみが残っているはずですので、この面談では現場代理人個人について「今回の依頼に対してしっかり準備しているか」「疑問や懸念に誠実に対応してくれているか」「自分たちのマンションを任せてよいと思えるか」といった点を修繕委員が主体となって見極めていきましょう。
    なお、複数社の面談を1日に詰め込むか、複数日に分散させるかは参加者の都合次第ですが、施工会社を1社に絞り込む作業だけは最後の面談が終わった後そのまま、参加者全員の記憶が新鮮な間に協議・決定してしまうのがおすすめです。
    選定が1社に固まったら、後日の契約締結を約束する意味で、理事長印を押した内示書をコンサルタント会社経由で施工会社へ送付します。

  • 工程表:各工事のスケジュールを図示した資料
    仮設計画図:足場や養生・トイレ等、工事中のみ設置する予定の造作を示す図
  • 内示書サンプル

実録! 施工会社選定 現役コンサルタントに聞く


施工会社を選定する際、コンサルタントとして修繕委員会へさまざまなアドバイスを行います。そのときに、どうアドバイスしていいのか迷うケースが、実はいまだにあります。
たとえば、前期の決算が赤字で会社としての安定性に黄色信号がついてるのに現場代理人の人柄が非常にいい場合。あるいは、同じく代理人は凄くいいのに見積り金額がほかより少々高い場合です。
施工会社を選ぶとき、もっとも重要視するのは大規模修繕工事の実績ですが、同じくらいに現場代理人の質も大事だと思っています。現場代理人は居住者の皆さんに対する工事中の窓口で、いわば大規模修繕工事の現場全体の顔。やはりいい加減な人には任せられません。
とはいえ、会社の安定性に懸念がある場合、迷った上で結局見送るケースが大半です。赤字になる会社は自転車操業になりがちで、職人への支払いも遅れていることがあります。支払いが遅れるような会社には腕のいい職人は居つかないもので、つまり質のよい工事は期待できません。極端な話、工事中に倒産して大規模修繕の取り組みが頓挫してしまう恐れもありますから…。


そういう意味で、本当に悩ましいのは後者のケース。以前、あるマンションのコンサルティング業務を請け負い、修繕積立金を確認したところ、修繕委員会が希望する工事を実施するには予算が足りないことがわかりました。しかし、そこは修繕委員の皆さんと各工事の優先順位を話し合い、こちらも知恵を絞りながら代替案を提示し、なんとか予算内に収まるプランをまとめて施工会社の公募を行いました。応募してきたのは10社。そこから6社に絞り、見積り依頼をしました。苦労した甲斐あって、見積りが予算内に収まった会社、収まらない会社が相半ば。しかし、予算内に収まらなかった1社の現場代理人が、とても理想的な人物像だったため、委員の方々はぜひその会社に工事を依頼したいという意見が出ました。


 しかしながら、現状では予算が合いません。そこで施工会社に無理を承知で「委員の方々を交えて工事費削減の方法を協議できないか」と相談してみました。すると意外にも施工会社は快くOKをくれて、そこから時間を見つけては三者で議論しました。
 まず私たちで各劣化部分の危険レベルを改めて詳細にランクづけし、優先順位・費用とも高い工事については施工会社側でも材料や工法によるコストダウンを検討してもらう。それを修繕員会の皆さんに見ていただいて…という作業を繰り返し、最終的には無事その施工会社に工事をお願いする事ができました。事前の期待通り、代理人の方の現場運営はとても優れていて、結果として非常に満足度の高い大規模修繕工事になったとのご評価をいただいています。

もちろん似たような手法を試みて上手くいかないケースもあるでしょうし、そもそも現場代理人に対するこだわりを捨てて最初から予算が折り合っている施工会社を選ぶという判断もあり得ますので、私としても「つねにこれがベストの選択」とは言えません。そこがいまだに迷うポイントです。
ただ、経験上、一つだけ確かなのは「現場代理人に違和感のある工事は上手くいかない」ということ。だから、やっぱり現場代理人にはこだわりたくて、次に同様のケースにいき当たったときも、迷いに迷って同じように対処してしまうのかも知れません(笑)

SUNシリーズ一覧

  • ISSUE 01 大規模修繕を知る
  • ISSUE 02 修繕委員のABC
  • ISSUE 03 パートナー選びの基礎知識
  • ISSUE 04 コンサル導入の手引き
  • ISSUE 05 修繕計画の予習帳
  • ISSUE 06 施工会社の選び方